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【第2629例会】会員卓話(2018年6月7日例会)

例会プログラム:会員卓話

卓話者:小早川会員
卓話タイトル:『ニワトリに歯はあるか』

この上下巻の本は1988年初版の本で、著者はアメリカの生物学者で、ハーバード大学教授でもあるスティーブン・ジェイ・グールドという人の書いたものです。私が歯科医であるため、この本の広告を新聞か何かで見て取り寄せて読んだエッセー集です。たしかニワトリには歯は無いはずだがどういうことかなといった疑問からです。
後ほどニワトリの歯の本についてお話ししますが、その前に動物の歯はどうなっているかを知る必要があると思い調べてみました。

この写真は本とは関係ないことですが、中国新聞に載っていた写真ですが、ペルーの動物園のライオンの歯の治療をしているもので、全身麻酔を掛けて歯科医か獣医が悪戦苦闘している様子です。ライオンは哺乳動物ということですが、このように脊椎動物すなわち背骨を持っている魚類、両生類、爬虫類、古い鳥類、哺乳類は殆ど歯を持っています。但し昆虫や軟体動物などに歯と言われるものはありますが、発生的に違っていて、いわゆる歯とは区別されています。

 

この骨の動物は歯が鋭くて沢山あります。目が二つ見えます。ヒラメでした。このヒラメのように泳ぐのはあまり得意ではなくて、待って獲物を捕まえる魚は口が大きく、円錐状の鋭い歯を持っています。ハモ、ウツボ、タチウオ、アンコウなどがこのような歯を持っています。一方、スピードをもって泳ぐのが上手で獲物を丸呑みするマグロ、ブリなどは歯がありませんし、浮遊物や微生物を食べるコノシロ、イワシなどには殆ど歯を持たないか、退化しているそうです。又、タイやイシダイはフジツボや貝をガリガリ食べるので、臼状の歯を持っています。更にフグ、カワハギは前歯がしっかりしていて、岩にくっ付いている獲物を食いちぎって食べるそうです。これらの魚はいずれも硬い骨を持つ硬骨魚類の仲間です。一口に魚と言っても顎を持つ顎口類と太古の魚のように顎を持たない無顎類に大きく分けられるそうです。無顎類、すなわち顎を持たない魚は円口類と言われるものが多いようです。この円口類はヌタウナギ、メクラウナギ、ナツメウナギのような魚で、獲物に吸い付いて食べます。顎を持つ魚の中にはエイやサメのような軟骨魚類がいますが、ご存知のようにサメはたくさんの鋭い歯を持っていて、次々とまた生えてきます。

これはコイです。現在の魚を馬鹿にしてはいけません。目は勿論、鼻孔で匂いを、耳もあって音を聞き、平衡感覚もあり、口の周りには味らいといって味覚器官もあり、内臓は我々と殆ど同じ位あります。さて、このコイやナマズ、ウミタナゴ、マンボウなどは特別な歯を持っています。咽喉歯又は咽頭歯と言われています。これはコイの咽喉歯です。口の前の方ではなく、喉の奥の方にあって、食べ物を咀嚼するのに使われているそうです。この歯で水草、貝類、ミミズ、甲殻類、蛙、他の魚の卵、小魚など何でも咬んで食べる雑食性です。

 

この骨の動物は上顎だけに歯があります。この動物はウシカエルでした。いわゆる食用ガエルです。カエルは両生類ですが、水辺を離れることはできません。この両生類の中で古い姿のままサンショウウオは生き残りました。殆ど水の中で暮らしています。ガマの油で有名なヒキガエルには歯がないとどこかに書いてありました。

 

 

この図は現在の大半の魚類と我々哺乳類の祖先が約3億年以上前に枝分かれしたという系統図です。左の枝が現在の魚類へ、右の枝が有名な古い魚のシーラカンスなどの仲間から両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類と進化しています。古いまま生き残ったのがシーラカンスです。従っていわゆる現在の魚よりシーラカンスや古い肺魚の仲間の方が我々人間に近いということになります。尚、現在の肺魚は古いタイプの魚となりますが、硬骨魚類の浮き袋はかつての肺が変化したものだと言われています。又、シーラカンスの胸びれと体の間には一本の骨があり、腕へと変化したようです。一方、現在の硬骨魚類の胸びれは体に直接ついています。

 

 

この骨の動物は、上下顎に歯があって口を大きく開けることができます。顎も割れることができるものもあるそうです。この動物はヘビでした。爬虫類は両生類より乾燥に強くなっています。『毒ヘビ』に注意、これは日経新聞の記事ですが、この辺りに住む毒ヘビのマムシは前の方の牙から毒を出します。しかしヤマカガシは奥の方に毒を出す牙があるそうです。ただヤマカガシは手を出さなければ咬まれることはないとのことです。ここまでの魚類、両生類、爬虫類の歯は数が多く、単純な円錐形をしていて、何度でも生え変わることができるそうです。ただ爬虫類でもカメは歯がありません。その代わり口の周りに口ばしのような硬い枠があって、これで食べ物を捕らえるとのことです。

 

この骨の動物は犬歯が強大です。今迄と少し違い、骨格が大きいものです。この動物はトラでした。ここから哺乳類となります。哺乳類の多くは乳歯から永久歯に生え替ります。トラはその中で肉食動物となっており、前歯の中でも特に犬歯が強大で、爪とともに獲物を捕らえて離さない、食い込む歯をしています。又、奥歯も尖っていて、肉を切るような働きをしています。ところで私ども哺乳類は、爬虫類からというより、両生類から進化したとも言われています。

 

 

この骨の動物は前歯と臼歯が全く分かれて形も違います。前歯(門歯、切歯ともいう)はしっかりと大きく、犬歯も目立ちません。この動物はシマウマでした。哺乳動物の中の草食動物です。このように形が違う歯を異形歯性といいます。前歯で草を咬み切り、奥歯ですり潰す臼歯となっています。ただウシやキリンは奥歯は上下にありますが、上の前歯はなく、硬い歯ぐきになっているそうです。草食動物の象さんは長い牙を持っています。これは武器や木を倒したりする時に使います。犬歯はなく、切歯が長くなったもの。一生伸びます。奥の方に草をすり潰す洗濯板のような歯があります。それは一生のうち、五回生え替わるそうです。一生伸びるのは、このイノシシやブタ、カバの犬歯。又、ネズミの前歯、ウサギの臼歯も伸びるそうです。常生歯といいます。

この図の動物は犬歯がそこそこ大きく、奥歯もびっちりあって上下で咬んでいます。チンパンジーです。哺乳動物ですが、雑食です。イノシシ、ブタも雑食ですが、日本にいるツキノワグマも草、ドングリ、肉も食べる雑食性です。ホモサピエンス(現代人)です。雑食です。頭が大きく、チンパンジーより犬歯も小さくなっています。哺乳動物は原則、一生のうち一回歯が生え替ります。前歯と奥歯の区別ができ、又、本数も少なくなり、動物によって歯の数が決まっています。人やサルの内の狭鼻類(旧世界サル)、ウシは32本。サルの内の広鼻類は36本、イヌ42本、ネコ30本、ブタ44本です。ただアリクイなどは歯がありません。この人は32本しっかり生えていますが、現代人ではこのような人は少数派になりました。現代の日本の女性です。その口の下顎の智歯(親不知)を表しています。右のやや小さい方の歯です。人は32本と言いましたが、親不知が退化しつつあり、全く4本ともない人もありますが、あってもこの図のように変なケースが多くなりました。顎が小さくなっているのに遺伝で32本の歯ができています。又、乱ぐい歯といって、歯が歯列の中に収まりきれなくて外に中にとはみ出したりしているケースも多く見られます。これは人類が文明と称して火を使い、ナイフを使って食べるようになり、急に軟食となり、しっかり咬まずに飲んでしまって顎が発達しないということだと言われています。親不知は変な状態なので、炎症を起こし易く、抜くのも困難なケースがあります。又、美的感覚の変化もあって子供の歯の矯正も多くなりました。この他、現代人は歯の数が少なくなったり、円錐歯といって小さい丸い尖った歯になったりして生えてくる場合もあります。

 

この骨の動物は歯がありません。カモでした。このカモのように現代の鳥には歯がありません。どうしてないのか私には分かりません。一説に空を飛ぶために軽くしているというのがあります。

 

 

これは始祖鳥の復元想像図です。およそ7000万年前に生きていたとされる鳥で、他にもこのような初期の鳥類が発見されているそうです。バタバタと飛ぶというより滑空するといった飛び方ではなかったかと言われています。前の翼の先には3本の指があり、爪がついて、翼が手であったことを証明しています。現在、定説となりつつありますが、恐竜には羽毛恐竜といって毛の生えた恐竜がいましたが、多くの恐竜が絶滅した中で、この一部が鳥として残ったと言われています。口の中はどうだったか、上、下顎に歯がありました。このことから鳥が恐竜の子孫だとする説をかなり前進させています。しかしその後6000万年前から鳥類には歯がないそうです。鳥の歯と似たようなことですが、クジラもかつて歯があったものが、ヒゲのように変化したようです。

咬む力の比較です。最大の値は、人70㎏、ワニ100㎏、ライオン220㎏、ダンクルオステウス600㎏。この4億年前のダンクルオステウスは現在のサメのごつい感じの魚類で絶滅しました。この数値はNHKテレビでやっていたのをメモしたものです。これがダンクルオステウスです。体長6~10mと言われています。

 

 

さて最初に言いましたこの本には何が書かれているのか、その一部をお話しします。いろんな事が書かれていますが、まず雄と雌はどちらが大きいかについて述べています。一般に人間を含めて哺乳類は雄が大きいのですが、動物界で最大多数の昆虫はノミの夫婦と言いますが雌が大きい。このバッタもそうです。ハチの女王蜂もそうです。本来、子孫を残すという点で雌が大きい方が当然という見方もあります。すなわち雄には単に種付け役で良いのではないかという見方もあると述べています。

 

この魚はチョウチンアンコウというのだそうです。右下の後ろに何かついています。海の深い所でやっと雌と巡り会えた雄の姿です。雌にくっ付いて離れないということですが、実は単に咬み付いているのではないのです。なんと寄生虫の如く雌から血液をもらっています。それでいて自分の心臓も排泄の為の腎臓も、そしてペニスも持っているそうで、その時はその役割を果たすようです。さて、このペニスは雄だけが持っていると思われていましたが、平成29年9月16日付中国新聞によりますと、ブラジルの洞窟に息む昆虫の雌にペニスのような交尾器があり、雄の体内に細長いそれを差し込んで雄から精子と栄養を取り、受精後は砂の中に卵を産むそうです。日本の学者が発見し、イグ・ノーベル賞をもらったそうです。
この著者は勿論、ダーウィンの説を支持されていますが、これを読んでみますと、「生物の集団には少しずつ変異があるが、標準的なものが多い」「その変異の中で環境の変化に適用できたものが自然淘汰によって保存され進化すると説明しています」。更に必ずしも強いものではなく、環境に適応できるものが生き残るということを述べています。例えば恐竜のティラノサウルスは恐竜中、最強の肉食恐竜でしたが滅んでしまい、その頃小さかった哺乳類、昆虫、魚類、鳥類、爬虫類、両生類が生き残っています。勿論、多くの細菌(ノックテリア)もです。

この本はエッセー集、すなわち随筆なので色々な話しとなっています。現在の馬の足はこのように5本の指の内、4本は退化し第3指の中指だけが残って地面についているのだそうです。
足に注目して下さい。足元の方が3本ぐらいに分かれています。このような奇妙な馬は、ローマ時代、ジュリアス・シーザーの厩舎で実際に生まれました。ヒズメが指のように割れていて、まるで人間の足のようだったそうです。予言者たちがこの馬の所有者は世界の支配者となる兆があると言ったので、シーザーは大切に育てて乗ったそうです。このようなことが何故起こるのかということで、この本の著者は遺伝システムに秘められた莫大な潜在能力の一つ、先祖返りという現象だと言っています。そこで、この先祖返りを裏付けるような実験がニワトリの歯の実験です。

この図はニワトリでなく、カエルの胚の図です。この胚というのは受精卵が発生を始めて自ら食事を取り始める「幼生」までの時期を言うそうです。この絵の左下の図で頭の横にエラのようなものがあります。ここは鰓弓(さいきゅう)といいますが、魚ではエラとなります。動物の発生段階でできます。この鰓弓の前の方が動物では顎や歯を作るもとになる部分です。そこでニワトリの歯の実験ですが、1980年にマーラーとフィッシャーという二人の生物学者が、ニワトリの鰓弓の上皮組織を取り出し、マウスの胚の歯ができる所へ組み込んだところ、歯ができたというものです。但し、それぞれの組織単独では歯ができないところの組織で実験をしています。すなわち現在のニワトリに歯が生えたという訳ではないのですが、もはや歯を作る能力を失った、今のニワトリでも歯を作る能力を隠し持っていると言っています。この本に書かれていることではありませんが、2016年2月に出された「宇宙からいかにヒトは生まれたか」(更科功著)という本にマウスの眼を作る遺伝子「パックス6」をハエの触覚に発現させると、ちゃんとハエの眼がハエの触覚にできると言っています。本来、ハエの眼はハエの頭にできるものです。そこで両者の眼を作る遺伝子は共通の祖先であると言っています。

最近の高校の生物の教科書に載っていた図ですが、人間の受精卵も細胞分裂をして胚になり、このように4週目で頭、鰓弓、手の原基、足の原基、尾まであります。このことから発生は人間が人間になる遙か前の姿を順次再現して人間となって生まれてくるという見方があります。これを「個体発生は系統発生を繰り返す」という言葉で言い表されています。そこで先祖返りというのは、一部が少し前の姿でこの世に出たということになるようです。最近の研究で、人などの哺乳類が持つ遺伝情報のDNAの内、70%が生きる上で必要だそうです。あとの30%は意味が無いか、まだ良く分かっていないかですが、私が思いますに、人間になる前のDNAは整理されて、一部のみそのまま受け継がれ、一部はタンスの中にしまわれて人間になるDNAのみ、その機能を発揮して人間として生まれてくるのではないかということです。

平成29年1月の日経新聞で血管や筋肉、骨、神経などに分化する前、ES細胞(すなわち、先程の受精卵からできる胚から取り出した幹細胞)と言いますが、これを使って小さなミニ腸を作ったという記事があります。勿論、ips細胞からでも作れますが、作業効率や成熟度はES細胞の方が良いそうです。さて、このips細胞ですが、人工多能性幹細胞と言います。すでに分化した皮膚などを処理して幹細胞まで戻した細胞です。ノーベル医学生理学賞を受賞された京都大学の山中伸弥教授が生み出したもので、現在、実際に臨床で使われているのは目の網膜の病気「加齢黄斑変性」の治療のみです。2018年5月17日の新聞には大阪大学の澤教授らによって、今年中に心不全の患者さんにips細胞を培養して作った心筋のシートを治療に使うことが厚生労働省によって認められたと報じられています。これらはいずれも臓器を作って応用したのでなく、組織片を応用したといった感じです。これからもどんどん研究されていくものと思います。

 

奨学生 例会出席

本日の例会に、お二人の奨学生が出席されました。
左から、金好会長
西条ロータリークラブ奨学生 黄 美鈴さん(中華人民共和国)
米山奨学生 余 盼盼さん(中華人民共和国)
カウンセラーの岩井会員